忠を取るか実を取るか?

発狂した主君に忠を尽くした譜代の家老と発狂した主君を見限って逐電した国家老

の命運は?前者は縛り首、後者はお家を失ったが命を長らえる。

 

芥川龍之介の短編小説 忠義の内容である。

 

発狂した主君のたっての頼みであった登城を独断で許した譜代の家老は、いわば情に流された親心が致命的な結末を引き起こした。方や冷静に判断して、自ら、国家老の要職

を投げだし、逐電したが、結果として、お家は断絶(改易)となったから、後者の

身の処し方の方が正しい結論となったのだが?

 

主君は神経の病を持つ身で、ひと時は蟄居の身となったが、譜代の家老の力で蟄居を解かれるが、神経病の原因が昔、ある藩の主君から辱めを受け、それが原因で病が高じ

遂に発狂するまで至る。登城の懇願の裏には、昔の遺恨を晴らす為、殿中で、憎い藩主の首を狙う魂胆があったことを譜代家老は知る由もなかったのが、大きな失態であった。

情に流された譜代家老は、藩主がまさか?登城の殿中で刃傷沙汰を起こすとは夢にも

考えなかったのだ。

ところが発狂した主君が斬った藩主は、遺恨を持つ人とは別の何のゆかりもない別人であった。只、その別人が着ていた裃の家紋が遺恨を持つ藩主の家紋と類似の家紋であった事が禍となっただけの不幸であった。

譜代家老は切腹も許されずに縛り首となって果てたのは、まことにいたわしい限りであった。

 

情けは人の為ならず??

 

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